投稿小説 小悪魔モンスターの10箇条 2







『そうだな。外人だから芸人とか知らねーだろうし最初のうちは色々教えてやるか。おい、これを見て真似をしろ。』

ライネスにスマホの画面を見せ、そこには大人びた黒髪の女性が。容姿は悪くなく、歳も20前半で会社勤めと思しきスーツ姿。
次の瞬間…『ウッキョッキョ〜!!ウキッ!ウキッ!ウキキッ!ウッキキー!!』突然鼻の下を限界まで伸ばして猿顔を作り、手に持っていた鞄を投げ捨て、両手をぶらぶらと揺らし…まるで本当に猿になったかのような動きをして。『ウキキィー!ウキッ!ウキッ!ウッキー!!』と着ていたスーツを脱ぎ、下着も雑に脱ぐと放り投げ全裸になった。

「な、ぁ……っ」

『意味は分かんだろ?やんなきゃ今度はマジで顔面すり潰れるまで木刀で滅多打ちにすんぞ。』

『はいカウントダウン〜5、4、3、2、1……』

動画内の女性の異常過ぎる行動に絶句するが、考える暇も与えられず無情にもカウントダウンされ、やらなければ先程のリンチが再び待っている。動画の女性も恐らく脅され、恥も外聞も捨て猿になりきってる事から、この脅し文句が本当の事だという証拠。
逃げられない。やるしか無く…

「う、ウッキー!!ウキ!うっ…ウッキー!」

意を決して動画内の女性がやっていた通りに、鼻の下を伸ばして…自分が思い描く猿のイメージを自分の身に再現させる。

「ウキキ!ウッキィー!!……ぅ、ウキッ!」

両手をぶらぶらと揺らし、顎を掻いたり手首を舐めたりと完全再現。
そして…

「ぅ……ウッキキィー!!ウキ!ウッキキィー!!」

自分の服を剥ぐようにして雑に脱ぎ、下着すらも乱暴に剥いで投げ捨てると見た目通りのおさなさが残る全裸姿に。

『ま、合格ラインギリギリだな。つまんねーけど最初から思い切り良く出来たから許してやんよ。』

「・・・ありがとうございます」

女性としての尊厳…いや、人としての尊厳をかなぐり捨てた猿の物真似はギリギリ合格点という評価。
余りの悔しさ、恥ずかしさにぷるぷると震えながら感謝を述べる事しか出来ない。

『今のは全部撮ってあるから、今後ウチらの命令に従わなかったり、今みたいな無茶振りを即実行しなかったら、お前の知り合い全員に送り付けるから覚悟しとけよ?』

「っ……わかり、ました。」

彼女達の私に対する脅しの材料が増え、自分で自分の首を絞めたようなもの。その悔しさは抑えきれず自然と表情にも出てしまい、それを見逃すはずもなく。

『なんだテメェ?メスザルのくせに文句ありそうな顔は。』

「そ、そんなことは…」

『こういう奴は心の中で絶対に屈しないとか誓ってんだよな。そうだろ?メスザル!』

そう言ってライネスの頭を思い切り叩く金髪女。

「…違います。」

『あぁ?ウチらに口答えしたよな、今?』

『したした。ペナルティとして猿動画送り付けの刑だな。』

頭を叩かれた悔しさ、猿の真似をした自分への怒り…こんな下劣な集団には絶対に屈しない。心の中でそう誓っていたが、全てお見通し。
指摘通りだと返事をしたら罰があるに決まってる。だから、違うと答えるがその反応は、彼女達の言葉に対する口答えだと捉えられ…

「そ、そんな…待って、ください!私は本当に…」

『お前は今後一生、ウチらに対する返事は肯定だけなんだよ。ハイ、YES、そうです。わかりました。おっしゃるとおりです。これ以外の返事をしたら反抗的と見なしてペナルティだかんな?』

「・・・はい。」

『へー、じゃあウチらに屈しないって思ってんのか?』

「・・・仰る通りです。」

素直に答えなければ、いや、彼女達の問いには必ず肯定しなければペナルティが待ってる。誘導尋問でも、必ずYESを出さなければならない。

『ま、別にいいよ。ウチらは案外優しいからな。さっきのは引っ掛けだからペナルティも無しにしてやんよ。』

「え・・・ありがとう、ございます。」

金髪女からでた言葉は意外なもので、てっきり反抗的だとペナルティが待ってるのかと思ったが…思わぬ言葉に感謝していると、無数のバイクの音が徐々に近付いてくるのが聴こえて。

『お、早かったな。まだ来るんだろ?全員呼んどけ。これから楽しいパーティーが始まっからよ。』

『お前みたいなクソ生意気な奴はじっくり時間掛けて徹底的に心折るから。覚悟しろよ?』

「・・・わかりました。」

差し伸べられた救いの糸は、地獄に垂らされた蜘蛛の糸ではなく、更に地獄へと引きずり込む糸だった。

『コイツの名前は何にします?モンキーはいるし、豚って体型じゃないし、ゴリラも面白みに欠けるっていうか…』

『そうだな…よし、お笑いモンスターにしよう。』





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