投稿小説 みんなの珍芸お義姉ちゃん 3







「ねぇお姉さん。さっきの全部スマホで撮ってたからね」

「え……?」

主犯格の女子はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて言った。

お義姉ちゃんの醜態に気を取られて気が付かなかったが、どうやら手の空いていたいじめっ子の1人が一部始終を撮影していたようだ。

「全裸のお姉さんが素敵な顔で笑い狂ってるところも、大人なのにお漏らししちゃったところも。みーんなここに収まってるよ?」

「そ…そんな……」

「ついでにお姉さんの持ち物に入ってたコレも撮ってあるから、いつでも名前と住所付きでこの動画バラまけるんだよねぇ。ほら」

ひらひらと目の前で自分の学生証を見せられると、くすぐり責めによってすっかり弛緩していたお義姉ちゃんの顔から、血の気が引いていく。

「やめてっ!返してよ!」

お義姉ちゃんは掴みかかろうとするも、両脇からいじめっ子たちに抑えられているため、その手が届くことはなかった。

すると、相手の女子がお義姉ちゃんの頬を思い切りビンタした。

「口の利き方に気を付けてね。今すぐいろんなサイトにアップしてもいいんだよ?」

「そ、それだけはやめて」

「やめてください、でしょ?次タメ口使ったり、他の大人にチクったりしたら問答無用でバラまくから」

「っっ……」

「あれ?お返事は?」

「………わかりました」

小学生相手に敬語を強制されるお義姉ちゃん。

僕が巻き込んでしまったせいでこんなことに…という罪悪感も当然あったが、正直に言うと、あんなに憧れていたお義姉ちゃんの情けない姿に対するショックの方が大きかった。

「おーい、優太くーん」

いきなり声を掛けられ、ビクッと反応してしまう。

「今日から優太くんのことは解放してあげるね」

あまりに唐突な宣言に戸惑う僕。あんなに楽しそうに僕をいじめていた連中が、いったいなぜ?

その理由はあまりに残酷なものだった。

「代わりに君のお姉さんを、私たちの『珍芸お義姉ちゃん』として可愛がってあげる」

「ちんげい…おねえちゃん…?」

「そう!優太くんみたいに恥ずかしい芸をいーっぱい仕込んであげるから、頑張って私たちの笑いものになってね?」

お義姉ちゃんに、僕が今までかかされた地獄のような生き恥を、同じように味あわせるというのだ。

いや、大人であるお義姉ちゃんが小学生の言いなりになってやらされるという状況は、同級生の僕とは比べ物にならないくらいの恥と屈辱を伴うかもしれない。

「ちょ、ちょっと待って!…ください」

「どうしたの?」

「あの、そういうのは、ちょっと…お金ならある程度払えますから、それでなんとかしてくれませんか……?」

「いらなーい。ちょうど優太くんいじめもマンネリしてきて、新しいオモチャが欲しかったんだよね」

「お、お願いしますっ!そこをなんとか」

「ねぇ」

主犯格の女子はお義姉ちゃんを冷ややかに見下ろしながら言った。

「次そうやって口答えしたら、動画バラまいた上で姉弟そろって死ぬまでくすぐりの刑だから。もうお漏らししてもやめてあげないよ」

僕を含めた死刑宣告を受けて、お義姉ちゃんはガクリと項垂れた。

「うんうん。やっと自分の立場がわかってきたみたいだね。それじゃあ…」

女子は楽しそうに黒板の前へ移動すると、チョークで1週間分の曜日を書いた。

「みんなでお姉さんのための時間割を考えよっか。どういうのがいいかな?」

女子の呼びかけを発端に、僕とお義姉ちゃんを拘束しているいじめっ子たちが口々にアイデアを叫ぶ。

時間割とは、どうやら『珍芸お義姉ちゃん』としてのスケジュールを指しているようだった。

小学生たちの情け容赦ないアイデアを聞いたお義姉ちゃんの顔は、これまでに見たことないほど真っ青になっていた。







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