投稿小説 みんなの珍芸お義姉ちゃん 4







☆『珍芸お義姉ちゃん』の時間割

月曜日 下校途中の女子中学生にモノマネ『発情期のメス猿』、『うんちするメス猿』、『自分のケツ穴の臭さに驚くメス猿』を披露し、感想を言ってもらうこと。ノルマは十人とする。

火曜日 必ず十人以上の通行人がいる場所に出向き、「やべ〜!!まんこかゆすぎ!!」と大声で叫びながら、ガニ股で股間に手を突っ込んで一分間ボリボリと掻くこと。掻き終わった後、「そういえばまんこ洗ってなかったわ!!がっはっは!!」と大声で叫び、カニ歩きで退散すること。

水曜日 午後五時に必ず小学校旧校舎の理科室に立ち寄り、自分で考えた一発芸を五個以上披露すること。芸の恥ずかしさや惨めさを私たちで採点し、合格点に達しなかった場合、ペナルティを与える。なお、一発芸は全て撮影するものとする。

木曜日 アドレス帳に載ってるサークルの友人から三人選び、それぞれ「うんちが漏れそう」、「まんこが臭すぎて困っている」、「ケツ穴の皺の本数を数えてほしい」という悩みを相談し、電話で答えてもらうこと。十分以内に通話を切られた場合、ペナルティを与える。

金曜日 朝昼夕の三回、大学の女子トイレで見ず知らずの人にケツだけ星人を披露すること。見てもらった後は、お礼に引っこ抜いたケツ毛をプレゼントしてあげること。

土曜日 アドレス帳に載ってるサークルの後輩から一人選び、水曜日に披露した一発芸を全て見てもらうこと。見てもらった後は、「今までキャラ作ってたけど、これが本当の私なの。どう思う?」と聞いて、感想を言ってもらうこと。

日曜日 繁華街の人混みから好みの男性を一人選び、鼻フックを装着した状態で逆ナンパすること。断られた場合でもオッケーを貰った場合でも、「うっひょひょ〜い!!彼氏欲しい〜!!」と裏声で叫びながらコマネチを二十回行った後、カニ歩きで退散すること。

※これらの行動に対して事情を聞かれた場合、いかなる状況であっても「私は恥ずかしいことが大好きなドMですけど、なにか?」と答えること。

上記の時間割を一度でも守れなかった場合や、拒否したり他の大人に密告した場合は、全ての動画と学生証の写真をネット上に拡散し、弟の優太とともにくすぐり処刑とする。



「まぁこんなところかな」

主犯格の女子が満足げに総括する。

人権を剥奪されるも同然のおぞましい時間割に、お義姉ちゃんも僕も絶句していた。

どうやったらこんなことが遊び半分で思いつくのか…僕たちはとんでもない連中に目をつけられてしまったのかもしれない。

「嘘ついてもすぐにこれでわかるからね」

女子はそう言うと、コードでリストバンドのようなものが接続された、箱型の機械をどこからか取り出した。

「嘘発見器ってやつだよ。そのへんのオモチャとは違う本格的なヤツ。パパに頼んで買ってもらったんだぁ」

ご機嫌の足取りで歩み寄ると、お義姉ちゃんの左手首にリストバンド部分を巻き付けた。

「これから適当に質問するから、お姉さんはいくつか答えてね。もちろん拒否権はないから」

「……はい」

お義姉ちゃんにとって得体のしれない機械を身に着けられるのは不安に違いないが、あれだけの醜態を学生証といっしょに撮られてしまった以上、逆らう術はなかった。

「お姉さんの嫌いな食べ物は?」

「…パスタ」

『ピッピー』という音が鳴った。確か夕飯にパスタが出てきたとき、お義姉ちゃんは普通に食べていたはずだ。

「ゴーヤ」

今度は音が鳴らなかった。そういえば、お義姉ちゃんは苦いものが食べられないと言っていた記憶がある。

「は、ハンバーグ」

また『ピッピー』という音が鳴った。ハンバーグも、お義姉ちゃんは問題なく食べていた。ということは…。

「ふふふ、心拍数が上がったね。言ったでしょ?オモチャじゃないって」

「そん、な……」

このやり取りで、ハッタリではなく本物の嘘発見器だということが証明されてしまった。

いじめっ子たちの命令を遂行しなかった場合でも、この機械を使って質問すれば、たちまち嘘がバレてしまう。

もうお義姉ちゃんに残された道は、時間割に従って生き地獄を味わうしかない。

「的中率ほぼ100%だもんな。マジですげえよ」

「前に使ったのって道端で注意してきた女子高生だっけ?いかにも正義感強そうな女の子で、すっごい生意気だったよね」

「好きな男の名前からオナニーの頻度まで洗いざらい吐かせたら半泣きになってたけどな」

「あははは!今思い出してもウケるわぁ」

平然と残酷なことを口にするいじめっ子たち。

今までの常識が一切通用しないこの状況に眩暈を覚えつつ、なにか僕にできることはないかと思考を働かせようとするも、相手はそこまで甘くはなかった。

「解放するとは言ったけど、優太くんも余計なことは考えないようにね」

釘を刺すように女子が言った。

「優太くんには毎日嘘発見器でチェックするから、いつでも私たちに筒抜けだよ?ちょっとでも大人や警察にチクろうとしたら、すぐお姉さんの動画が全世界に見られちゃうし、二人とも死ぬまでこちょちょされちゃうよ?いいのかな?」

「そんなっ!」

「あれあれ?不満かな?じゃあさっそくお姉さんの動画を…」

いくらなんでも横暴すぎる。僕が抗議の声を上げようとしたとき…。

「ゆ、優太!」

名前を叫ばれそちらを振り向くと、そこには記憶にないほど弱々しい眼をしたお義姉ちゃんの姿があった。

「お、おねがい…今はやめて…?あんなのバラまかれたら、もう生きていけないっ……」

僕がかつて憧れた、誰にも媚びないという強い意志を宿した眼差しは、もうどこにもなかった。

僕があのときお義姉ちゃんに相談しなければ…それまで通り我慢してやり過ごしていれば…いくつもの後悔が頭をよぎるも、全て後の祭りだ。

こうして僕の自慢のお義姉ちゃんは、完全にいじめっ子たちの『珍芸お義姉ちゃん』に成り下がってしまった。

「これからよろしくね?お姉さん」

女子はそう言うと、満面の笑みでお義姉ちゃんの頭を撫でた。






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